第14回:初代3500系(モ800形812〜)

 名鉄3500系というとVVVF制御の通勤車を思い出す方が多いでしょうが、今回は初代の3500系です。
 初代3500系は波乱に富んだ履歴を持つ系列で、1939(昭和14)年に「いもむし」こと3400系や、3450系(実際には、モ3350・3650・ク2050として完成。後の3600・3650系)に続く転換クロスシート装備のロマンスカーとして計画されました。しかし、戦時体制に入ったため、1942(昭和17)年に3扉両運転台付きロングシート車として7輌が完成、電装品がないため西部線(新名古屋〜新岐阜間など旧名岐鉄道線区の総称:当時は電圧600V)でTc代用として使われていました。
 戦後になってようやく1500Vで電装、1949(昭和24)年には旧知多鉄道(現:名鉄河和線)の950形3輌を編入して、モ3500形は総勢10輌となりました。さらに1951(昭和26)年には2扉化を実施、のちに扉間の転換クロスシート化、片運転台化が行われて、計画時に近いスタイルとなっています。1952(昭和27)年には、モ3500形のうち5輌が電装解除されてク2650形と改称の上、3650系に編入されています。
 残った5両はク2650形の一部やク2550形と編成を組んでいましたが、1981(昭和56)年には、Tc車廃車の上、残った3両が再び両運転台化されて800形に編入、モ812〜814に改番されました。戦時中にロングシート化されたままのオリジナル800形の中にあって、転換クロスシートの3両は異色の存在でした。
 また、3500系のTc車として、ク2500形が3輌ありました。こちらは便所つきで製造されましたが、使用されることなく撤去され、1980(昭和55)年に廃車となるまで3扉ロングシートのまま、800形や830形と編成を組んでいました。
 なお、モ3504は1960(昭和35)年に踏切事故でトラックと衝突、炎上したため廃車となりました。同車の機器類を再利用してモ3561が製造されています。なお、モ3501は1951(昭和26)年に東芝製の直角カルダン駆動の試験車となったことがあります。

 増結車として活躍するモ812(元モ3502)。 名古屋本線ナゴヤ球場前(現 山王)〜金山橋(現 金山)間。 1986(昭和61)年5月4日撮影。 

先代3500系の略歴
1942(昭和17)年…9月に日本車輌でモ3500形7輌、ク2500形3輌製造。ただし、モ3500形は未電装のまま西部線でTc車として使用され、戦後電装。
1949(昭和24)年…旧知多鉄道のモ950形(昭和17年木南車輌製)3輌をモ3500形に編入。
1951(昭和26)年…モ3500形は2扉化され、後に扉間転換クロスシート化、片運転台化も実施。7月、モ3501で直角カルダン駆動の試験を実施。台車TT-1、電動機SE-507(110kw)。
1952(昭和27)年…モ3506〜3510の5輌を電装解除、3650系に編入の上、ク2650形2651〜2655に改称。(第15回参照)
1960(昭和35)年…モ3504、踏切事故で全焼。機器類を再利用して、同年モ3560形3561を製造。(第16回参照)
1979(昭和54)年…12月、モ3501廃車。同時に廃車となった相棒は元モ3500形のク2653。
1981(昭和56)年…8〜9月にかけて、モ3502.3503.3505の3輌を両運転台化の上、モ800形に編入。3502→812、3503→813、3505→814と改称。相棒だった、ク2654.2655.2561は廃車。
1989(平成元)年…モ813.814の2輌廃車。
1996(平成8)年…4月、モ812廃車。同時にモ811も廃車となり、オリジナルを含めて初代モ800形は形式消滅。

車両番号
(製造時)
車  歴
モ3501 昭17日本車輌製(未電装)→昭22頃電装→昭26 2扉化、直角カルダン駆動の試験実施 →昭44片運転台化・扉間転換クロスシート化→昭54この年12月に廃車。南知多ビーチランドに食堂として保存されるが、後に解体。
モ3502
昭17日本車輌製(未電装)→昭22頃電装→昭26 2扉化→昭44片運転台化・扉間転換クロスシート化→昭56両運転台化の上、モ800形に編入。モ812と改称。→平8この年4月に廃車。
モ3503 昭17日本車輌製(未電装)→昭22頃電装→昭26 2扉化→昭44片運転台化・扉間転換クロスシート化→昭56両運転台化の上、モ800形に編入。モ813と改称。→平元 廃車。
モ3504 昭17日本車輌製(未電装)→昭22頃電装→昭26 2扉化→昭35踏切事故により炎上・廃車。機器類を再利用して、モ3561が製造される。
モ3505 昭17日本車輌製(未電装)→昭22頃電装→昭26 2扉化→昭44片運転台化・扉間転換クロスシート化→昭56両運転台化の上、モ800形に編入。モ814と改称。→平元 廃車。
モ3506 昭17日本車輌製(未電装)→昭22頃電装→昭27電装解除ク2655→昭44扉間転換クロスシート化→昭56この年7月に廃車
モ3507 昭17日本車輌製(未電装)→昭22頃電装→昭27電装解除ク2654→昭44扉間転換クロスシート化→昭56この年7月に廃車
デハ951 昭17木南車輌製 知多鉄道デハ951(未電装)→昭18名鉄モ951→昭22頃電装→昭24名鉄モ3508→昭27電装解除ク2651→昭44扉間転換クロスシート化→昭63この年1月に廃車
デハ952 昭17木南車輌製 知多鉄道デハ952(未電装)→昭18名鉄モ952→昭22頃電装→昭24名鉄モ3509→昭27電装解除ク2652→昭44扉間転換クロスシート化→昭63この年1月に廃車
デハ953 昭17木南車輌製 知多鉄道デハ953(未電装)→昭18名鉄モ953→昭22頃電装→昭24名鉄モ3510→昭27電装解除ク2653→昭44扉間転換クロスシート化→昭54この年12月に廃車
ク2501 昭17日本車輌製→昭54この年11月廃車、廃車時の相棒はモ831
ク2502 昭17日本車輌製→昭55この年3月廃車、廃車時の相棒はモ832
ク2503 昭17日本車輌製→昭54この年11月廃車、廃車時の相棒はモ808

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参考文献
このページの作製にあたって、以下の文献を参考にさせていただきました。

『名鉄』 白井昭・白井良和・井上広和共著 保育社(1981年初版発行)
『名鉄』 白井良和・諸河久共著 保育社(1989年初版発行)
『まるごと名鉄ぶらり沿線の旅』 徳田耕一著 七賢出版(1995年初版発行)
『鉄道ピクトリアル』1996年7月臨時増刊号 (特集:名古屋鉄道) 鉄道図書刊行会
『鉄道ピクトリアル』2003年1月号 鉄道図書刊行会
『私鉄電車ガイドブック4』 東京工業大学鉄道研究部編 誠文堂新光社

『名古屋鉄道』(復刻版私鉄の車両11) 飯島巌・白井良和・井上広和共著 ネコ・パブリッシング(1985年に保育社より初版発行。2002年復刻)