第55回:750形

 700形(右)と編成を組んで早春の谷汲線を行く。右側の700形は片運転台化されましたが、750形は最後まで両運転台車でした。 
 谷汲線赤石〜北野畑間。 1998(平成10)年4月5日撮影。

 旧名古屋鉄道(*1)が1928〜1929(昭和3〜4)年に10輌新製した車両。前年製造の700形(第7回)とは車輪径に差がある程度で、ほぼ同型車です。当初は屋根中央にパンタグラフ、両端にポールを取り付けて、当時の名鉄ターミナル駅だった押切町から名古屋市電に乗り入れて、市中心部の柳橋まで直通運転を行っていました。
 1932(昭和7)年には、755.756の2輌が半室畳敷きに改装されて、下呂温泉までの直通列車(*2)となりました。遙か後年の特急「北アルプス」の原型といえるでしょう。1948(昭和23)年の名岐線(現名古屋本線名鉄名古屋〜名鉄岐阜間)1500V昇圧によって600V各線区に移動、最後は揖斐・谷汲線に集結しました。
 揖斐線黒野〜本揖斐間及び谷汲線の廃止に伴い、2001(平成13)年9月末で現役を引退しましたが、最後まで残った3輌はいずれも保存(*3)されており、その点は嬉しい限りです。

(*1)名鉄犬山線、津島線などの母体となった鉄道。昭和5年に美濃電気軌道と合併して名岐鉄道に改称、昭和10年に愛知電気鉄道と合併して、現在の名古屋鉄道となります。

(*2)名鉄の高山本線乗り入れは、1932(昭和7)年10月に始まりました。当初は750形755.756を半室畳敷きに改装の上、柳橋〜下呂間を1時間56分で結ぶ「直通特急」を運転しています。翌1933年には、新お座敷車のデホ251.252(旧尾西鉄道の200形を改装)にバトンタッチしました。

(*3)モ751は、岐阜県本巣郡北方町で車体のみがパン屋さんの店舗として利用、モ754は、車体を半分に切断して愛知県瀬戸市の「瀬戸蔵」で保存展示、モ755は、旧谷汲駅で保存展示されています。モ755はスカーレット一色のままですが、モ751.754はダークグリーンの旧塗装に塗り替えられています。

750形の略歴

1928(昭和3)年…1929(昭和4)年までに旧名古屋鉄道デセホ750形として、10輌を製造。

1932(昭和7)年…国鉄(現 JR)高山本線乗り入れ用として、デボ755.756の2輌を半室畳敷きに改装。

1948(昭和23)年…名岐線などの1500V昇圧(5月)に伴い、広見線、大曽根線(現小牧線)、各務原線に転属。

1964(昭和39)年…3月に各務原線が、10月に小牧線が1500V昇圧。新川工場の火災により、モ760が廃車となる。

1965(昭和40)年…4月に広見線1500V昇圧。モ751〜759全車が瀬戸線へ転属。瀬戸線時代にモ751.754.755は片運転台化。(揖斐・谷汲線転属後、再び両運転台化)

1966(昭和41)年…モ752.753.756.757が揖斐・谷汲線へ転属。

1969(昭和44)年…12月、モ756電装解除。ク2151と改称。2151は、1978(昭和53)年に廃車。

1970(昭和45)年…7月、モ753.757廃車。

1973(昭和48)年…モ751.754.755.758が揖斐・谷汲線へ転属。瀬戸線に残ったモ759は自動扉化実施。

1978(昭和53)年…瀬戸線1500V昇圧。モ759が揖斐・谷汲線へ転属。従来から揖斐・谷汲線に所属していた車輌も順次自動扉化。

1984(昭和59)年…10月、揖斐・谷汲線の一部でワンマン運転実施。

1998(平成10)年…4月、モ752.758.759廃車。

2001(平成13)年…9月末で揖斐線黒野〜本揖斐間及び谷汲線廃止。12月にモ751.754.755廃車、形式消滅。

 谷汲駅で発車待ちの755。昭和初期には高山本線下呂駅まで直通運転を行った車輌です。現在の谷汲駅には、この755と510形の514が保存展示されています。 1999(平成11)年11月27日撮影。

「名鉄いろいろ」目次へ戻る

分館トップページへ戻る


参考文献
このページの作製にあたって、以下の文献を参考にさせていただきました。

『名鉄』 白井良和・諸河久共著 保育社(1989年初版発行)
『まるごと名鉄ぶらり沿線の旅ver.3DX』 徳田耕一著 七賢出版(2002年初版発行)
『鉄道ピクトリアル』1996年7月臨時増刊号 (特集:名古屋鉄道) 鉄道図書刊行会
『鉄道ピクトリアル』2006年1月臨時増刊号 (特集:名古屋鉄道) 鉄道図書刊行会
『名鉄600V線の廃線を歩く』 徳田耕一著 JTB
『私鉄電車ガイドブック4』 東京工業大学鉄道研究部編 誠文堂新光社
『名古屋鉄道』(復刻版私鉄の車両11) 飯島巌・白井良和・井上広和共著 ネコ・パブリッシング(1985年に保育社より初版発行。2002年復刻)
『せとでん100年』 山田司・鈴木裕幸共著 中日新聞社