第18回:初代800系

 名古屋本線金山橋駅。画面右側の土盛りがなされている場所に現在の金山駅があります。 1988(昭和63)年1月24日撮影。 

 旧名岐鉄道(名鉄名古屋本線新名古屋〜新岐阜などの母体となった鉄道)が押切町(1941年に新名古屋駅が開業するまで名古屋方のターミナルだった駅)〜新岐阜間の直通運転開始に備えて登場させた、名岐初の18m級電車です。特急用としてクロスシートを装備し、名鉄AL車の基礎を作った系列です。
 基本形式の両運転台車モ800形、制御車ク2300形を電装した片運転台のモ830形、当初は付随車だったク2310形からなりますが、戦前〜戦中にかけて電装と電装解除を繰り返した車両もいるために、番号の変遷が複雑になっている車両もみられました。また、性能的には「なまず」の愛称を持つ流線型電車850系と同じ系列になります。
 戦時中に輸送力増強のためにロングシート化されてしまいましたが、1948(昭和23)年の1500V昇圧後は、本線系の各線で特急から普通にまで幅広く使用されてきました。新型車の増備によって、昭和40年代から廃車が始まりましたが、最終的にはモ3500形からの編入車も含めて1996(平成8)年まで、60年以上にわたって活躍を続けました。

初代800系の略歴
1935(昭和10)年…翌1936(昭和11)年にかけて日本車輌で、名岐鉄道の特急用クロスシート車デボ800形(名鉄モ800形)として10輌製造。
名岐鉄道は、1935年8月に愛知電気鉄道と合併して、名古屋鉄道となる。802.803の2輌はすぐ電装解除され、ク2250形2251.2252となる。

1937(昭和12)年…800系の制御車としてク2300形(初代)2輌を日本車両で製造。

1938(昭和13)年…800系の付随車としてサ2310形5輌製造。この年6月に800形の番号整理を行い、804→802、805→803、809→804、810→805と改称。

1942(昭和17)年…9月、ク2301.2302を電装して片運転台電動車モ831.832と改称。12月、ク2251.2252を再電装してモ809.810に改称。なお800系列は、戦時中に全てロングシート化される。

1946(昭和21)年…サ2310形を制御車化。ク2310形と改称。

1948(昭和23)年…西部線(旧名岐鉄道線区の総称)の昇圧により、1500V集電となる。モ801、火災のため車体を新造。

1957(昭和32)年…モ802〜806を片運転台化する。1959(昭和34)年にはモ801.807.808も片運転台化。

1969(昭和44)年…7月、ク2315廃車。福井鉄道へ譲渡され、同社のクハ111となる。10月、モ803廃車。東芝府中工場へ譲渡され、サイリスタ制御の試験車となる。

1971(昭和46)年…8月、モ806.807廃車。806の機器類は7300系モ7307に再利用される。

1979(昭和54)年…豊田新線(現 豊田線)の試運転初列車にモ805-ク2313を使用。11月、モ808.831廃車。廃車時の相棒は、それぞれク2503.2501。

1980(昭和55)年…3月、モ832廃車。廃車時の相棒はク2502。

1981(昭和56)年…9月、ク2312廃車。相棒のモ802は両運転台化して、モ811と改称。同時にモ3502.3503.3505の3両も両運転台化の上モ800形に編入、モ812〜814と改称。(第14回:3500系参照)

1983(昭和58)年…3月、モ805-ク2313廃車。愛知県豊田市の鞍が池遊園に保存。

1988(昭和63)年…3月、モ801-ク2311.モ804-ク2314廃車。

1989(平成元)年…モ809.810.813.814廃車。

1996(平成8)年…4月、モ811.812廃車。形式消滅。モ811(旧804→802)は、日本車輌豊川製作所に保存。

車両番号
(製造時・編入時)
車 歴
デボ801 昭10日本車輌製名岐デボ801、愛知電気鉄道との合併により名鉄モ801→戦時中にロングシート化→昭23昇圧→昭32片運転台化→昭63年3月廃車
デボ802 昭10日本車輌製名岐デボ802、愛知電気鉄道との合併により名鉄モ802、まもなく電装解除されク2251と改称→昭17再電装され、モ809と改称→戦時中にロングシート化→昭23昇圧→昭32片運転台化→平元年7月廃車。
デボ803 昭10日本車輌製名岐デボ803、愛知電気鉄道との合併により名鉄モ803、まもなく電装解除されク2252と改称→昭17再電装され、モ810と改称→戦時中にロングシート化→昭23昇圧→昭32片運転台化→平元年7月廃車。
デボ804 昭10日本車輌製名岐デボ804、愛知電気鉄道との合併により名鉄モ804→昭13番号整理でモ802に改称→戦時中にロングシート化→昭23昇圧→昭32片運転台化→昭37高運転台化→昭56両運転台化、モ811に改称→平8年4月に廃車
デボ805 昭10日本車輌製名岐デボ805、愛知電気鉄道との合併により名鉄モ805→昭13番号整理でモ803に改称→戦時中にロングシート化→昭23昇圧→昭32片運転台化→昭44年10月廃車。東芝府中工場へ譲渡され、サイリスタ制御の試験車となる。
デボ806 昭11日本車輌製名鉄モ806→戦時中にロングシート化→昭23昇圧→昭32片運転台化→昭46年8月に廃車。機器類をモ7307に再利用。
デボ807 昭11日本車輌製名鉄モ807→戦時中にロングシート化→昭23昇圧→昭32片運転台化→昭46年8月に廃車
デボ808 昭11日本車輌製名鉄モ808→戦時中にロングシート化→昭23昇圧→昭32片運転台化→昭54年11月に廃車
デボ809 昭11日本車輌製名鉄モ809→昭13番号整理でモ804に改称→戦時中にロングシート化→昭23昇圧→昭32片運転台化→昭63年3月に廃車
デボ810 昭10日本車輌製名岐デボ810、愛知電気鉄道との合併により名鉄モ810→昭13番号整理でモ805に改称→戦時中にロングシート化→昭23昇圧→昭32片運転台化→昭58年3月に廃車
ク2301 昭12日本車輌製ク2301→昭17電装、モ831に改称→戦時中にロングシート化→昭23昇圧、戦後一時850系の中間M車となる→昭54年11月に廃車
ク2302 昭12日本車輌製ク2302→昭17電装、モ832に改称→戦時中にロングシート化→昭23昇圧、戦後一時850系の中間M車となる→昭55年3月に廃車
サ2311 昭13日本車輌製サ2311、戦時中にロングシート化→昭21 Tc化ク2311と改称→昭23昇圧→昭63年3月に廃車
サ2312 昭13日本車輌製サ2312、戦時中にロングシート化→昭21 Tc化ク2312と改称→昭23昇圧→昭56年8月に廃車
サ2313 昭13日本車輌製サ2313、戦時中にロングシート化→昭21 Tc化ク2313と改称→昭23昇圧→昭58年3月に廃車
サ2314 昭13日本車輌製サ2314、戦時中にロングシート化→昭21 Tc化ク2314と改称→昭23昇圧→昭63年3月に廃車
サ2315 昭13日本車輌製サ2315、戦時中にロングシート化→昭21 Tc化ク2315と改称→昭23昇圧→昭44年7月に廃車、福井鉄道へ譲渡、同社のク111と改称。
モ812 昭56モ3502を両運転台化の上編入、モ812と改称→平8年4月に廃車
モ813 昭56モ3503を両運転台化の上編入、モ813と改称→平元7月廃車
モ814 昭56モ3505を両運転台化の上編入、モ814と改称→平元7月廃車

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参考文献
このページの作製にあたって、以下の文献を参考にさせていただきました。

『名鉄』 白井昭・白井良和・井上広和共著 保育社(1981年初版発行)
『名鉄』 白井良和・諸河久共著 保育社(1989年初版発行)
『まるごと名鉄ぶらり沿線の旅』 徳田耕一著 七賢出版(1995年初版発行)
『鉄道ピクトリアル』1996年7月臨時増刊号 (特集:名古屋鉄道) 鉄道図書刊行会
『鉄道ピクトリアル』2007年8月号 鉄道図書刊行会
『私鉄電車ガイドブック4』 東京工業大学鉄道研究部編 誠文堂新光社
『鉄道ダイヤ情報』1988年7月号 弘済出版社
『名古屋鉄道』(復刻版私鉄の車両11) 飯島巌・白井良和・井上広和共著 ネコ・パブリッシング(1985年に保育社より初版発行。2002年復刻)