第9回:870形

 オイルショック後の乗客増に対応するため、旧札幌市電の連接車A830形を1976(昭和51)年に譲り受けたものです。大きな窓が特徴の欧風車両で、札幌時代の1966(昭和41)年には、鉄道友の会からローレル賞を受けています。名鉄への転入に当たっては、側窓の開閉化など小規模な改造を行いました。
 当初は主に徹明町〜美濃間の直通列車に、1981(昭和56)年の美濃町線増発後は、主に徹明町〜日野橋間の区間運転に使用されてきました。1988(昭和63)年に1編成が廃車となりましたが、残りの2編成は、車体更新・冷房化・ワンマン化・複電圧化(新岐阜乗り入れ可)を行い、2005(平成17)年3月末の名鉄600V線区全廃まで活躍しました。名鉄での稼働期間は、札幌時代の約3倍に及んでいます。
 なお、本家札幌に残ったA830形は長い休車の後、1984(昭和59)年に形式消滅しています。

 徹明町で客待ち中の870形。このころは、塗装と側窓の開閉化を除いて札幌時代の形態をよく残していました。 美濃町線徹明町。    1987(昭和62)年4月29日撮影。

 車体更新、冷房化、集電装置のパンタグラフ化を実施した870形。この後さらにワンマン化と扉の増設(運転台右側・片側3扉→4扉)、複電圧化工事を行いました。側面の印象はかなり変わりましたが、正面の特徴あるスタイルは最後まで健在でした。 
 美濃町線競輪場前。 1999(平成11)年12月17日撮影。

 名鉄600V線区最終日の870形。車内は満員でした。ワンマン化にともない、前照灯横に「乗降中」の表示が追加されています。
 美濃町線野一色〜競輪場前間。 2005(平成17)年3月31日撮影。


870形の略歴
1965(昭和40)年…東急車輌で、札幌市電A830形として6編成12輌製造。
1976(昭和51)年…A837〜A842の3編成6輌が名鉄へ譲渡され、870形(871〜876)となる。塗装変更の他、ステップ取り付け、固定式だった側窓の一部を開閉可能とする。(1978年に戸袋以外の側窓全てが開閉可能となる)
1988(昭和63)年…871-872廃車。2編成4輌となる。
1996(平成8)年…この年から翌年にかけて、冷房化・車体更新・パンタグラフ化を実施。
2000(平成12)年…ワンマン化工事・扉の増設・複電圧化工事を実施。新岐阜への乗り入れが可能となる。
2005(平成17)年…3月末で名鉄600V線区は全廃。全車廃車となる。

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参考文献
このページの作製にあたって、以下の文献を参考にさせていただきました。

『名鉄』 白井昭・白井良和・井上広和共著 保育社(1981年初版発行)
『名鉄』 白井良和・諸河久共著 保育社(1989年初版発行)
『鉄道ピクトリアル』1996年7月臨時増刊号 (特集:名古屋鉄道) 鉄道図書刊行会
『まるごと名鉄ぶらり沿線の旅ver.3DX』 徳田耕一編著 七賢出版
『路面電車と町並み 岐阜・岡崎・豊橋』 日本路面電車同好会名古屋支部編 トンボ出版
『名古屋鉄道』(復刻版私鉄の車両11) 飯島巌・白井良和・井上広和共著 ネコ・パブリッシング(1985年に保育社より初版発行。2002年復刻)