第53回:900系(旧知多鉄道デハ910形→名鉄モ910形、後の北陸鉄道モ3740形および福井鉄道140形の一部)

 福井鉄道140形モハ141-2として、21世紀まで活躍を続けた旧名鉄モ902(旧モ906、ク2336、モ(デハ)916)の車体。  福井鉄道武生新駅。  2005(平成17)年1月15日撮影。 * 名鉄時代の画像でない点は、ご容赦ください。

 1931(昭和6)年に開業した知多鉄道(現 名鉄河和線)が開業に備えて製造した電車で、製造時はデハ910形910〜914,916〜918(*1)を名乗っていました。鉄道省(国鉄→JR)武豊線に対抗するため、当初から高速運転を意識した鉄道で、デハ910形もシートピッチ1560mmの固定クロスシートを装備、小荷物の積み下ろしを考慮して、助士側の乗務員扉は700mmの広幅を採用、910.914.916〜918の5輌は正面貫通扉が引き戸のため、方向板を運転台窓下に取り付けていました。知多鉄道は、太田川から愛知電気鉄道常滑線(現 名鉄常滑線)に乗り入れて神宮前まで特急・急行運転を実施して、昼間1往復のみの特急は神宮前〜知多半田間を27分で結んでいました。(*2)
 知多鉄道は1943(昭和18)年に名鉄に合併し、デハ910形はそのまま名鉄モ910形として活躍を続けます。戦時中に輸送力増強のためロングシート化、戦後片運転台化改造などを受けて、長い間名鉄本線系統で使用されてきました。
 1964(昭和39)年には機器類を3730系に譲って電装解除、ク2330形となりましたが、その翌年には瀬戸線の輸送改善のため再び電装、モ900形となります。一部はパノラマカーと同じ逆富士形の方向板を取り付け、扉間に転換クロスシートを装備して、スカーレットに白帯へ塗装変更されて、瀬戸線の特急用となりました。
 1978(昭和53)年に瀬戸線が1500Vに昇圧されたため廃車となりましたが、車体は北陸鉄道・福井鉄道に譲渡されて北陸鉄道モハ3740形、福井鉄道140形の一部(モハ141-2〜143-2)として再起しました。しかし寄る年波には勝てず、北陸鉄道モハ3740形は1990(平成2)年に形式消滅、最後まで残った福井鉄道140形モハ141-2も2006(平成18)年10月に「さよなら運転」を行い、現役を引退しました。

(*1)新規開業時の形式は、1、100、1000などきりのよい番号から始まることが多いと思います。知多鉄道で910という中途半端な数字が採用されたのは、開業年が皇紀2591年に当たったため、下2桁をとって910形としたということです。915が欠番となっているのは、知多鉄道や親会社の愛知電気鉄道では5を忌み番としていたためだそうです。なお、皇紀とは神武天皇が即位したといわれる年を紀元とした紀年法で、皇紀元年は紀元前660年、今年(2007、平成19年)は皇紀2667年になります。皇紀に由来する形式を持つものとして、他に名古屋市電2600型、参宮急行電鉄(現 近鉄)の2600形貴賓車などがあげられます。

(*2)2007年6月30日改正のダイヤでは、神宮前〜知多半田間を特急は21分、急行は26分で結んでいます。

900系の略歴

1931(昭和6)年…知多鉄道デハ910形(910〜914,916〜918)として、日本車輌で8輌を製造。製造時はパンタグラフを2基装備。

1943(昭和18)年…名古屋鉄道に合併、名鉄モ910形となる。910→915と改番し、欠番を埋める。戦時中にロングシート化実施。

1951(昭和26)年…914を太田川車庫の火災によって焼失。918→914、915→917、917→915と改番。

1958(昭和33)年…片運転台化実施。

1964(昭和39)年…台車・機器類を3730系に譲ってTc化、モ911〜917→ク2330形2331〜2337に改称。

1965(昭和40)年…ク2331〜2336は初代600形の機器を利用して再電装の上、モ900形901〜906と改称、瀬戸線へ転属。この時客用扉を手動化。

1966(昭和41)年…3月ダイヤ改正で瀬戸線特急運転にともない、特急化改造。扉間転換クロスシート化、塗装のスカーレット化、ミュージックホーン取り付け、逆富士山形方向板取り付け、自動扉化を実施。車番の振り替えを行い、ク2337→モ901、906→902、905→903、903→905、902→906、901→907となる。901〜903が特急車となり、ク2301〜2303と編成を組む。

1968(昭和43)年…3月の瀬戸線特急増発(30分間隔→20分間隔)にともない、904〜906も特急車化。904〜906の相棒はク2320形。この年7月からスカーレットに白帯の塗装を採用。なお、907はロングシートのまま、1972(昭和47)年に塗装のみスカーレット+白帯化。

1978(昭和53)年…瀬戸線昇圧のため、全車廃車。車体のみ譲渡されて北陸鉄道モハ3740形、福井鉄道140形の一部となる。

製造時の番号 番  号  の  変  遷
デハ910
昭和18年 モ915→昭和26年 モ917→昭和39年 ク2337→昭和41年 モ901→昭和53年 福井鉄道モハ142-2
デハ911 昭和18年 モ911→昭和39年 ク2331→昭和40年 モ901→昭和41年モ907→昭和56年 福井鉄道モハ143-2(昭和53〜56年は福井鉄道で休車)
デハ912 昭和18年 モ912→昭和39年 ク2332→昭和40年 モ902→昭和41年モ906→昭和53年 北陸鉄道モハ3744
デハ913 昭和18年 モ913→昭和39年 ク2333→昭和40年 モ903→昭和41年モ905→昭和53年 北陸鉄道モハ3743
デハ914
昭和18年 モ914→昭和26年 太田川車庫の火災により焼失。914の機器類を再利用してモ3751を製造。(資料によっては、914の焼失を昭和23年としたものもあり)
デハ916
昭和18年 モ916→昭和39年 ク2336→昭和40年 モ906→昭和41年モ902→昭和53年 福井鉄道モハ141-2
デハ917
昭和18年 モ917→昭和26年 モ915→昭和39年 ク2335→昭和40年 モ905→昭和41年モ903→昭和53年 北陸鉄道モハ3741
デハ918 昭和18年 モ918→昭和26年 モ914→昭和39年 ク2334→昭和40年モ904→昭和53年 北陸鉄道モハ3742

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参考文献
このページの作製にあたって、以下の文献を参考にさせていただきました。

『名鉄』 白井昭・白井良和・井上広和共著 保育社(1981年初版発行)
『まるごと名鉄ぶらり沿線の旅』 徳田耕一著 七賢出版(1995年初版発行)
『鉄道ピクトリアル』2006年1月臨時増刊号 (特集:名古屋鉄道) 鉄道図書刊行会
『せとでん100年』 山田司・鈴木裕幸共著 中日新聞社