第49回:デキ370形

 愛知電気鉄道(名鉄名古屋本線神宮前〜豊橋間や常滑線の原型となった鉄道)が1925(大正14)年から製造した電気機関車です。全9両が製造されましたが、371.372(製造当初は370)の2両は米国から輸入されたもので、車体はボールドウィン社、機器類はウェスチングハウス社製で、集電装置はパンタグラフの他にポールも装備していました。増備車である373〜379(製造当初は372〜374、376〜379)の7両は、1928(昭和3)年〜1929(昭和4)にかけて国内で製造されています。こちらは車体が日本車両製、電気機器はウェスチングハウス社からの輸入品を使用しています。
 なお、愛電時代は375が欠番になっていました。(*1) 1935(昭和10)年の名鉄設立時に、370→372、372→374、374→375と改番されて371〜379の通し番号となりました。
 長年にわたって名鉄1500V線区の貨物牽引や工場の入換機として活躍してきましたが、2007(平成19)年に形式消滅しています。


(*1)1919(大正8)年に常滑線日長〜新舞子間で電1形5号車と電2形15号車が正面衝突事故を起こしました。そのため、愛電では縁起を担いで電3形(のちの名鉄初代1000形)から末尾5を忌み番として、付番しないようにしていました。

 須ヶ口駅(新川工場)構内でキハ8000系の入換作業に励むデキ378。 1988(昭和63)年11月4日撮影。 

晩年は瀬戸線用として活躍したデキ376。 瀬戸線喜多山駅構内。 2004(平成16)年11月22日撮影。

 特別整備を受け、青色に塗装されたデキ379。 瀬戸線喜多山車庫内。 2004(平成16)年11月22日撮影。

デキ370形の略歴

1925(大正14)年…愛知電気鉄道デキ370形として、米国ボールドウィン社・ウェスチングハウス社で370.371の2両を製造。

1928(昭和 3)年…この年から翌年にかけて日本車両で372〜374.376〜379の7両を増備。ただし、電気機器はウェスチングハウス社から輸入して使用。

1935(昭和10)年…愛知電気鉄道は名岐鉄道と合併して名古屋鉄道となる。同時に、370→372、372→374、374→375と改番を実施して、371〜379の通し番号となる。

1965(昭和40)年…372廃車。

1968(昭和43)年…371.373.374.377の4両が廃車。

1978(昭和53)年…瀬戸線の1500V昇圧により、375が同線喜多山車庫入換用となる。この時点で376が常滑線など本線用、378が新川工場(のちの新川検車場)入換用、379が鳴海工場入換用として働いていた。

1984(昭和59)年…375廃車。376が瀬戸線へ転属。

1994(平成 6)年…4月、379が特別整備を受け、塗装を青色に変更。

1996(平成 8)年…5月、379が瀬戸線の工事列車牽引用として同線へ転属。

1997(平成 9)年…4月、舞木検査場新設にともない、378が新川検車場から転属。

2007(平成19)年…376,378,379の3両が廃車。形式消滅。

参考文献
このページの作製にあたって、以下の文献を参考にさせていただきました。

『名鉄』 白井昭・白井良和・井上広和共著 保育社(1981年初版発行)
『名鉄』 白井良和・諸河久共著 保育社(1989年初版発行)
『まるごと名鉄ぶらり沿線の旅』 徳田耕一著 七賢出版(1995年初版発行)
『鉄道ピクトリアル』1996年7月臨時増刊号 2006年1月臨時増刊号 2009年3月臨時増刊号(いずれも特集:名古屋鉄道) 鉄道図書刊行会
『私鉄電車のアルバム 別冊B 機関車/ナローゲージの車輌』 慶應義塾大学鉄道研究会編 交友社