あなたの目の前に穴が2つ空いていて、その1つに向かってボールを投げるとしよう。あなたの投げたボールはその穴を通過して穴の向こうにある壁にぶつかる。しかし、ボールの大きさが原子レベルになると、驚くべきことに、ボールはまるで波のように動き、同時に2つの穴をすりぬけ、その2つの穴を通過した粒子は、理科の実験でやった光スリットの実験のように波の干渉を起こしてしまうのである。量子レベルの世界、つまり原子や分子レベルの世界にはこのような不思議な現象が存在する。 この現象に対して、ボーアらは「観測する行為が波動を収縮させ粒子にする。そして、粒子は確率的にしか存在しない」との解釈を提唱した。言い換えると、もしあなたが粒子だとするとその存在は確率的となり、たとえば「冷蔵庫の前にいる確率70%」「温泉につかっている確率30%」のように存在し、母親に冷蔵庫の前でつまみ食いをしているのを「観測」されるまでは、ひょっとしたら温泉につかっていたかもしれないということになる。 『シュレーディンガーの小猫たち』(原題『Schrodinger's Kittens and The search for Reality』)ではこの2つの穴の実験のパラドックスを、シュレーディンガーの猫を用いて視覚化し、光の本性についての古代から現代に至る研究成果を科学史的背景を交えながら紹介。光よりも速く過去に向かって伝わるシグナルによってこのパラドックスが解決されるとする交流解釈を紹介する。重厚な解説本であり読みごたえ十分だ。(別役 匝)
コペンハーゲン解釈も多世界解釈も不要の真の量子力学を!
量子力学は微細な世界を記述するので、日常生活の言葉や常識が通用しません。身の回りの電化製品(パソコンや携帯電話など)がきちんと動作するのだから、我々は量子力学の使い方は分かっているわけです。しかし、観測問題と実在について量子力学が示すことは、驚くべきことばかりで、十分に理解されているとは言えません。本書も、二重スリットやEPRパラドックス、ベルの不等式などを解説していますが、エピローグで紹介されているクレイマーのtransaction interpretation「交流解釈」についてを広く認知させることが主眼でしょう。特に、日本では、この解釈が不当に無視されています。多くの人が本書を読んで、transaction interpretationの合理性を理解しよう。
シュプリンガー・フェアラーク東京
量子力学の奇妙なところが思ったほど奇妙でないわけ 迷走する物理学 そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命 物理学に生きて―巨人たちが語る思索のあゆみ (ちくま学芸文庫) ループ量子重力入門―重力と量子論を統合する究極理論
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