違和感


 そのとき感じた違和感をどう表現したらいいだろう。
 体中いっせいに目覚めたような、そんな気がした。

 好意でも嫌悪でも無く、自分でもわからないけれど、なにかが起きているのだ、その事だけは感じていた。

 

 顔も試合内容も知っていた。 自分に良く似たインファイター。
 東日本新人王。幕之内一歩。

 けれど全日本新人王決定戦の棄権を知り、たまらず駆けつけた東京。息せき切ってたどり着いた鴨川ジム。  
 そこで見たそいつは・・・・。

  
 生じるその違和感。


    コイツはナンナンダ?



 じわりと生まれたそれは、染み付いていくように、自分に入りこんでいたのだろうか。

 

 

 あの時の違和感が変わっていくのに時間はかからなかった。

 不意の感情から生じたそれは当初名前すらなかった。
 けれども、もやもやとうすぼけた世界で、それは少しづつ形を持つようになる。

 
 目が、耳がそれを求める。

 

 あいつの声を、
 
      表情を、 
 
      言葉を、

 
 体中が欲するようになる。

 

 

 表向きはライバル。
 
 されど、
 わきあがるこの感情をどう押さえて良いのか。

 

 

 はじめは。
 
 はじめは心が満たされれば良いと思っていた。

 他の誰でも無く、自分が一番になれるのであれば、あいつが自分の事を一番に見てくれるのならば、それだけで良いと思った。

 

 

 だが、

 それは変化しつづける。

 名も無い違和感はときめきへと変化した。

 そして今、

 強烈な独占欲へと進む。

 あいつを自分でいっぱいにしてしまいたい。

 
 
 
 ・・・・・押さえることができるだろうか。

 

 


彼の中での始まりです。

それはそっと影から忍び寄り、そ知らぬ顔で侵食をはじめます。
それは密かに油を注ぎ、彼をあおります。
 
彼は幸せになれるでしょうか。