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Development / 展開部 |
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8月8日。土曜日。 いろいろ気になることはあったものの、それでも疲れてはいたようで、目が覚めたら7時に近かった。 ベランダの方から差し込む朝日が眩しかった。 目をこすりながら起きてみると、女性二人はまだ寝ていた。 ミサトさんはすごい寝相だ。 なるほど、加持さんの言う通り。 ・・・これ、ソフトにイタズラなんてしたら起きないんじゃないの??
「アスカ、そろそろ起きよ」 |
◇ |
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アスカがシャワーを浴びてる間に、ぼくは朝ご飯の支度を始めた。
その途中、ミサトさんが起きたらしい。
どたどたと、廊下を何回か往復する音がしてから、キッチンに入ってきた。
メカジキのバター・ソテーと、レタスとトマトと大根のサラダ、それにお味噌汁の簡単な朝ご飯。
洗濯機を仕掛けたアスカが、キッチンに戻ってきた。 |
◇ |
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食事が済んで、訓練を再開した。 昨晩は、何度も繰り返して、パターン2-1~2-7は、何とか合うようになってたはずだったのに、 今朝はまた逆戻りだった。 2回に1回くらい、アスカかぼくのタイミングがズレて、機械が“Error”の表示をする。 どっちが原因っていう感じでもない。
もう20回は繰り返したろうか。シークェンスが終ったところで、話し掛けた。
更に何回かシークェンスをやったところで、ミサトさんは、少し考え込んだ。
ミサトさんがいなくなって、アスカと二人きりになった。
「・・・さっきのは何よ」 |
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近くの洋食屋さんからカレーの出前を取って、少し遅めのお昼ご飯にした。
食器を洗って玄関の外に出し、リビングでテレビを見ながら食休みしていたら、玄関のチャイムが鳴った。 そこにいたのは、洞木さんと、トウジ、ケンスケだった。 ミサトさんが用意したペアルックを着てたので、ぼくたち二人のことを誤解されそうになった。 今たぶん第3新東京市で最もいがみ合ってる二人を捕まえて、そんなこと言われても。 ちょうどそこに、ミサトさんが帰ってきた。 ミサトさんは、綾波を連れてきていた。 洞木さんたちも一緒にうちに上げて、リビングのテーブルでお茶をしながら、作戦概要を説明している。 洞木さんたちの誤解を解くために必要なんだとしても、重要機密をあんなにペラペラしゃべっていいのかなぁ。 ぼくは普段、ケンスケに根掘り葉掘り訊かれたときでも、教えてあげたくても何も言わないように努力してるのに。 その間、綾波は、この作戦のアクション・パターン指示書を熱心に読んでいた。 そうしている間も、ぼくとアスカは、午前中から続けていた訓練の続きをしていた。 クラスの友達が見てるということで、少し気合が入ったけど、だからってすぐにはうまくいかない。
洞木さんに、
確かにその通りなんだけど、友達が見てる前でそんなこと言わなくったっていいじゃないですか、ミサトさん。
どうせ詳しい説明をする必要があるわけじゃないのに、
どうして、「まあまあねー」とかフォローしてくれないんですか。
恥ずかしさと情けなさのあまり、ぼくがまた間違えてしまって、また“Error”が出た。
もう何度目か数えるのもめんどくさい。
とうとうアスカがヘッドフォンを外してリビングの床に投げ付けた。
「あったりまえじゃない! このシンジに合わせてレベル下げるなんて、うまくいくわけないわ!」
アスカの気持ちは分かる。
ぼくだって恥ずかしいくらいなんだから、アスカには、みんなの視線と溜息は耐えられないよね。
ぼくのせいにしたいのも分かるよ。確かに、迷惑掛けてるもんね。
でも、だからって、そんな言い方、ないんじゃないかな。
「土台ムリなハナシなのよ」
綾波と合わせるのは、これが初めてだった。
でも、パターン1-1から、すんなり合った。
アスカのときと、全然違う。
たぶん、ミサトさん、右側の機械のパーソナル・パターンを零号機に変えたんだ。
零号機と初号機は、レスポンスがほとんど同じなんだろう。
綾波とぼくは、曲のテンポに合わせて、同じタイミングでアクション・パターンをなぞってるだけだ。
合わないわけがない。
パタパタと、ノー・ミスで進んでいった。 でも、それは問題があると思う。 そもそも零号機は今、ヤシマ作戦のダメージの修理のためにメンテナンス中だ。 だからこの前の戦闘にも参加できなかった。 綾波が交替するなら、弐号機に乗ることになるんだろう。 コアのパーソナル・パターンも書き換えになる。 その前提で、楽譜の弐号機パートをまた書き換えないといけないんじゃないだろうか。 そうしたら、今みたいに簡単に合わせられるとは限らない。 そもそも、綾波は弐号機にシンクロできるんだろうか。 綾波が弐号機に乗ってるとこなんて見たことないけど。
「もー、イヤっ! やってらんないわっ!」 ミサトさん、こういうやり方、ヒドいですよ。 これじゃまるで、アスカが綾波より劣ってるみたいじゃないですか。 アスカが傷つくに決まってますよ。 何故か洞木さんに叱られて、ぼくはアスカを探しに飛び出した。 ぼくじゃなくて、ミサトさんが行くべきなんじゃないか、と思ったけど、そんなこと言ってる場合じゃないよね。 しかし、探す当てなんてない。 エレベーターを降りて、通りに出て、左右を見回したが、アスカの姿は見えなかった。 こんな恥ずかしい格好をして、駅の方に行くとはあまり思えない。 駅と反対方向を探してみようと思った。 こっちにはコンビニがあって、その先には、公園くらいしかなかったんじゃないかな。 暫く走っていったが、見当たらない。 公園まで来て、あたりを見回したけど、いない。 この先って、何かあったっけ。 ぼくが知らないくらいだから、アスカだって知らないだろう。 うちを飛び出して走ってきて、公園があったら、ちょっと入るよね、たぶん。 ここにいないのなら、つまり、こっちには来てないってことじゃないだろうか。
来た方向に走って戻った。
コンビニの前を通り過ぎようとして、中にアスカがいるのが見えた。
見ると、ジュースなんかが入っている冷蔵庫の扉を開け放して、その前に座り込んでいる。
頭を冷やしてるんだろうか。
お店の人が、ちょっと、困惑気味な感じだ。
面倒なことになる前になんとかしなくちゃ。
でも、この状態のアスカを宥めるなんて、ぼくにできるだろうか。
お店に入って、アスカの許に向かった。
コンビニの外にあった公衆電話から、ミサトさんに、アスカを見つけたことを連絡した。
アスカが、
「こうなったら、何としてもレイやミサトを見返してやるのよ」 アスカは、へこたれてなかった。 良かった。 打ち合わせみたいなことは何もしなかった。 でも、アスカがすぐに帰りたくないのは分かったから、何も言わなかった。
ミサトさんちへの帰り道。
ぼくたちは、並んで歩いた。
アスカは、ぷりぷりと怒って、綾波とミサトさんの悪口を言っていた。
ぼくは、正直、あまりいい気分ではなかった。
でも、確かに疑問だった。 アスカは気がついてなかったかもしれないけど、ぼくたちの歩みは、ぴったりと合っていた。 |
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「「ただいまー」」
「じゃあ、出前とろっか」
卵パセリ・サンド、ハム・レタス・サンド、ツナ・マヨ・キュウリ・サンド、と、いっぱい作って、
1食分は冷蔵庫に入れ、1食分はミサトさんに。
残りはリビングに持っていった。
アスカは、テーブルに向かい、ミサトさんが書いたタイミングのズレのデータを読み込んで、
何やらペンで楽譜に書き込みしていた。
ぼくは、サンドイッチをテーブルの端っこの方に置いて、
二人でサンドイッチを食べながら、打ち合わせした。
「アスカ」
「ホント?!」
「で、どう変えんのよ?」 お皿とコップを片付けにキッチンに行った。 相変わらずテーブルで仕事しているミサトさんの脇を通って冷蔵庫の前まで行き、 貼ってあるカレンダーに、アスカが印を付けた。 攻撃予定日の8月11日のところに、大きな赤い丸印。
「さー、やるわよー!」 訓練を重ねていくうちに、だいぶ改善してきた。
10時前に、ビールと焼き鳥の缶詰を持って、ミサトさんが現れた。
シークェンスが終了し、後ろを振り返る。アスカのスコアが99、ぼくのスコアが92だった。
これまでの最高得点。 その後も何度か喧嘩したけど、その度に少しずつ改善して、とうとうアスカは100点を出せるようになった。 ぼくも、コンスタントに95点以上。一度だけ100点が出た。 だいぶ自信がついてきた。
何回目かの100点と99点が出たときに、ミサトさんがリビングに戻ってきて、言った。 |
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8月9日。日曜日。
今日はミサトさんは休日だけど、ネルフに休みなんてない。
それが証拠に、朝早く電話がかかってきた。
ぼくとアスカが同時に起きたけど、アスカはぼーっとしている。
ぼくがキッチンに行って、電話に出た。
相手は日向さんだった。
ぼくは、振り返って、大きな声で、
「ダメだよ、蹴っ飛ばしたりしちゃ」 なんで、こんなつまんないことで喧嘩してるんだろう。 でも、布団の片付けのタイミングは完璧に合わせられた。
アスカはシャワーと洗濯のためにお風呂場へ。
ぼくは、朝ご飯を作りに、キッチンへ向かおうとしたら、電話が終ったミサトさんがキッチンから出てきた。
まだお尻をさすっている。 |
◇ |
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「それじゃゆうべのおさらいからー。音楽スタート!」 朝ご飯の後は、パターン1-1から1回ずつ繰り返すシークェンスをおさらいした。 アスカとぼくは、いきなり100点を揃えた。
ビールを呑みながら見ていたミサトさんは、その結果を見て、パチパチ、と、2回だけ拍手した。 緊張したせいもあったかもしれないけど、これは難しかった。 久しぶりに、盛大にコケまくった。 アスカが最初に言ってた、3-4の問題点も理解できた。 確かに、4拍目近辺にやることが多くて、次のパターンを聞き逃しがちになる。
「はい、ストップー。シンちゃん、」 |
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アスカの説明は、すぐに理解できた。 つまり、次のパターンが何であるかを確認するために、このタイミングで音声指示を聞く、というのを、 楽譜の中に記号として書き込んで、覚えてしまうということだ。 それは、エヴァを操作するアクションではないけれど、心の中のアクション。 言ってみれば、休符みたいなものだ。 アスカが、弐号機の休符を楽譜に書き込んでくれて、ぼくもそれを初号機のタイミングに書き直して、覚えていった。 一通り覚えたところで、ランダム・シークェンスを何回かやってみた。 まだまだ全然ダメだけど、さっきよりはだいぶ良くなった。 少なくとも、パターン番号の聞き逃しはほとんどなくなった。 最後に、ミサトさんを呼んで見てもらった。 ミサトさんは、「だいぶ良くなったじゃないの」と言ってくれた。 手ごたえを感じて、昼食休憩に入った。
お昼は丼ものを出前した。
アスカとぼくは親子丼。
ミサトさんはエビ天丼。
アスカはスプーンを使っていたが、丼ものを食べるのは初めてらしく、最初は苦戦していた。
でも、どうやらこのスタイルが気に入ったらしい。
黙々と食べている。 |
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お昼ごはんのあと、少し休憩。
アスカはテレビを付けたが、ぼくは雑誌を読みたかった。
ユニゾン中だから、どっちか一方の主張が通ることになる。
喧嘩をしてたら、アスカの見たいテレビは終っちゃったらしい。 寄ると触ると喧嘩ばかりしているぼくたちだけど、なんだか、息が合ってきた気がするのは気のせいか。 |
◇ |
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気のせいじゃなかった。
午後の訓練にも、ミサトさんは姿を見せなかった。
アスカとぼくは、ときに喧嘩しながらときに良く話し合って、ひとつずつ問題を潰していった。
夕方にはもう、ほとんど99点か100点という状態になった。
ミサトさんを呼んで、成果を見てもらうことにした。 ミサトさんが、前祝をする、と言って、中華料理屋さんから、大皿の仕出し料理を頼んだ。 豪華な夕食になった。 ミサトさん、お給料日までまだだいぶあるのに、だいじょぶなのかなぁ。 アスカは、中華料理が口に合ったらしい。 ちょっと、悔しかったけど、そんなことより、みんなが楽しそうなのが、うれしかった。 最初にこのテーブルで3人で食事をしたときのことを思い出した。 メンバーは同じなのに、今日はとても楽しい。 いや、このテーブルで、今まで何度も食事をしてきたけれど、今がいちばん楽しい。 アスカとミサトさんが楽しそうにおしゃべりしてて、ぼくがそれを聞いてる。 ただそれだけなのに、なんでこんなに楽しいんだろう。
アスカが、ふぅ、と言ってそっくり返り、「美味しかったー」って言った。
「あんたたち、いいチームになったわね」
「この作戦が終っても、こうやって、チームで運用できたらいいな、って、思ってんのよ」 エヴァに乗ることが楽しいって思ったことはなかったけど、こういうのは、楽しいかもしれない。 そう思った。 |
| つづく |
| Concertino |