アクセス解析
カウンター
訪問
7月16日 (土)

久しぶりの日記。
やっぱり三日坊主になっちゃったわねぇ。
仕事が面白過ぎるのがいけないのよね。
ついつい眠くなるまでやっちゃうから。
職住近接も考えモノ。

とゆーわけで、今日、日記をつけたのは他でもない。
あたしは退院したのです。
これから、この家でのあたしの暮らしが始まるのね。
あたしとシンジの、かな?

久しぶりに食べるシンジの料理は、やっぱり美味しかった。
あたしの退院祝いってことで、あたしの好きなものばっかりの
ご馳走を作ってくれた。
シンジは、ミサトの分も食卓に並べてた。
あたしは、そういうシンキくさいのは、あんまり好きじゃないから、
やめさせようかとも思ったんだけど。
でも、以前に、あたしの分も作ってくれてたことも知ってるし、
そんなシンジの努力で、今あたしはここにいるんだなって思ったら、
やっぱり言えなかった。
今は、シンジがやりたいようにさせてあげる。
そのうち、ゆっくり話をしてみよう。

シンジは、あたしが食べてるのを、笑って見てた。
あたしが“美味しい”っていう度に、うれしそうに、テれてた。
たぶんシンジは、こんな食事がしたかったのよね。
あたしもそうだったのかもしれない。
心の中で、もう一度、“ただいま”って言ってみた。

晩ご飯のあと、シンジと明日の予定を話し合った。
「日曜日なんだしさ、どっか行きたいわよね」
「あ、えっと、」
「あたし、まだ、独りで出歩くのはちょっと、ね」
「そっか」
「だからさ、どっか連れてってよ」
「あのさ、明日は、トウジのお見舞いに行こうと思ってたんだけど・・・。
あ、じゃあさ、一緒に行く?」
「え?」
あのねぇ・・・。
このあたしがデートに誘ってやってるってのに、
なんだってひとのお見舞いなんかに行かなくちゃいけないのよ!
「たぶん、洞木さんも来てると思うよ」
「あ、そっか」
なるほど。あたしもヒカリには会いたい。それはいいアイディアね。
「じゃあ、午前中はそれでもいいけど・・・。
午後はどっか連れてってよ。
あたし、まだ、この辺よく知らないし、
独りじゃ、お休みの過ごし方だって分からないし」
「でも、そんなこと言ったって、ぼくだって分かんないよ」
「なによ、分かんないって。あんた、休みの日、どこ行ってたのよ」
「家にいたけど・・・」
そっか。こいつ、こういうやつだっけ。
ならば、これから教育するまでよ。
「はー、呆れたもんねぇ・・・。よし、じゃあ、歩き回るわよ。
面白いものが見つかるかもしれないし」
「ぼくも一緒に行くの?」
「あったり前でしょ? あたしはまだ足腰が弱いんだから」
「うん、分かった」
なによ、結局うれしそうにするんじゃないの。
だったら最初っからそうしなさいよ。
不安になっちゃうじゃないの。

松代の街路図を表示して、二人でチェックした。
ガイドブックやネットの情報とにらめっこしながら、
明日行くべき場所をピックアップしていく。
はっきり言って、シンジはこういう作業は苦手よね。
でも、頑張って付き合ってくれたから、赦してやるか。
明日は晴れるといいわねぇ。

シンジが帰ってから、寝室でこの日記をつけてる。
明日の朝は、シンジが起こしてくれるはず。
せっかくもらった目覚し時計も、あたしの目を覚ます道具としては、
あまり役に立つことはないみたい。
まあ、それでもいいわ。
この時計の使い道はそれだけじゃないんだし。

おやすみなさい。

7月17日 (日)

今朝は、洗濯ものを巡って、 ちょっとした事件があった。
でも、これはちょっとエッチだから、別ファイルで号外にしておこう。
結局、洗濯はこっちでまとめてやることにした。

11:00頃、病院地区に向かった。
鈴原のリハビリにつき合うのは、あたしはもちろん初めてだけど、
シンジも初めてだってのは驚いた。
鈴原が来て欲しくないって言ったそうだけど、
でも、それなら何故、今日に限ってシンジは行く気になったのかしら?

トレーニング・ルームに行ったら、鈴原はもう始めてた。
なまっちろい左脚からコードがたくさん生えてる。
右脚と違うのがひと目で分かる。
確かに、知らない人にこれを見られるのはつらいわよね。
鈴原、よくあたしが来ること許したわね。
鈴原も、痩せこけたあたしを見てるから、お返しのつもりかしら。

鈴原は、機械を相手に、いろいろ設定をいじくりながら、
義足の反応速度や筋力のデータを取っているらしい。
完成すれば、自分の足とほとんど変わらない機能を回復できるって言ってた。

シンジは、特に何かを手伝うってわけじゃないんだけど、
鈴原が何やらやってる横で、世間話したり、
表示される数字を読み上げて記録したり、
回数をカウントしてあげたりしていた。
たぶん、普段はヒカリがこれをやってるのね。
シンジって、こういうとき、ほんと、真面目よね。
あたしのリハビリを手伝ってもらってたときの顔を思い出した。
それにしても、この二人の会話って面白いわね。
ボケとツッコミがくるくる変わって。
鈴原がうれしそうなのが、なんだか羨ましい。

あたしは、そんな様子を横目で見ながら、ヒカリとおしゃべりしてた。
でも、黙ってるときの方が多かったかも。
ヒカリが鈴原を見る目って、ほんとに落ち着いてる。
この二人、きっといろいろあったんだろうなぁ・・・。
いいのよ、ヒカリ。あたしが全部聞いてあげるからねっ!
とゆーわけで、ヒカリと文通する約束をした。
さっき1通めを出しといたから、明日にはお返事が来るかな?

お昼になって、あたしたちはおいとますることにした。
長居して、二人の大事な時間を邪魔するつもりはないし。
帰り際に鈴原が、シンジに向かって、
「おおきに、また寄ったってや」
って言って笑ってたのが、印象的だった。
なによ、シンジ。
あんた、ちゃんと友達いるんじゃないの。
友達に、頼りにされてんじゃないの。
もっと、胸張んなさいよ。
まったく、なんであたし、こんなにうれしいんだろ。
とにかく、今日は、お見舞いに行ってよかった。

少し遅めのお昼ごはんを、市場棟のファースト・フード・ショップで済ませた。
「今日はちょっと見直しちゃったわよ」
って言ったあげたら、テれてたわね。
ま、シンジだし、こんなもんか。

午後は、松代の街をぶらぶらと歩いた。
バスで駅前まで出て、そこから、昨日チェックしておいたスポットを
いくつか回った。
いかにもダウンタウンって感じの商店街を、
ウィンドウ・ショッピングしながら歩く。
服とかアクセサリーは、やっぱり、長野まで出ないとダメみたい。
大きなレンタル・ビデオ屋さんと、本屋さんは見つけた。
オンラインでは見られないビデオや本が、結構置いてある。
ときどき来ようかしら。

途中に、貸し衣装屋さんがあった。
ショー・ケースに、純白のウェディング・ドレスが飾ってあった。
シンプルなデザインなのに、ため息が出るほどきれいだった。
あたしは、ちょっと見とれちゃって、立ち止まって見ていた。
そしたら、シンジが、ボソッと。
「平和、って言われても、よく分かんないけど、」
「え?」
真面目な顔だった。
「アスカがこんなドレスを着られるのが、平和なんだとしたら、
平和っていいね」
「なによ・・・。あたしだけ?」
「あ、もちろん、世界中の人たちみんなが、っていう方がいいけど、
ほら、プラグ・スーツ着なくていいっていうのがさ」
「ふーん、そう。
ま、言いたいことは分かるけど。
あたしだって、いつまでもプラグ・スーツ着てるわけじゃないわよ。
今はネルフで研究をやってるんだし。
そういうあんたこそ、ちゃんとプラグ・スーツ脱げたの?」
「え?」
「あたしのことなんか心配してないで、自分のやること見つけなさいよね。
・・・ウェディングってのは、独りじゃ着られないんだからさ」
「え?」
「ほら、行くわよ」
「あ、うん・・・。ね、今、なんて言ったの?」

ウソよね。
あたしは、まだ、半分プラグ・スーツを着てる。
エヴァのパイロットだった過去の栄光や屈辱は、忘れてないし。
だから、ミサトやファーストのことを考え始めると、やっぱり平静では
いられない。
それは分かってる。
でも、独りで脱げるのかな・・・。
それともシンジが手伝ってくれるかしら。

それにしても、どさくさに紛れてすごいこと言ってるわね。
今日のあたし、変だったかも。

小さなゲーム・センターを見つけたから、ちょっと寄ってみた。
シンジは相変わらず何やらせてもダメ。
あたしも、それ見てバカにしてるようじゃいけないんだけど、
ついつい言っちゃうのよね。
シンジにムッとした目で見られて、いけない、って思うんだけど。
ごめんなさい。これからは気をつけます。

それから晩ご飯の買物をして、帰ってきた。

デートか・・・。
向こうがそう思ってるかどうかも分かんないし、別になんにもなかったけど。
普通、こんなもんよね。
シンジだって、楽しそうだったし。

7月18日 (月)

今朝は、10:00頃起きるって約束したんだけど、
なんか、変な夢を見て、早く目が覚めちゃった。

シンジも帰ったし、そろそろ寝ようと思って寝室に行ったら、
あたしのベッドの上に、知らない女の子が倒れてるのよ。
揺すって起こそうとするんだけど、全然起きないの。
寝てるっていうより、意識がないって感じ。
ともかく保安部に連絡しようと思って、電話掛けようとしたのよね。
ダイアルして、呼出音が二回鳴ったと思ったら、電話が切れるじゃない。
どうしたのかな、って思ったら、誰かの手が、電話のフックを押してるのよ。
驚いて振り返ったら、さっきの女の子が立ってるわけ。
びっくりして、その子の顔をよく見ようとしたら、目が覚めちゃった。
ヤな夢だったわねぇ。
寝不足だからかしら。

それで、まだ8:30だったけど、シンジに電話して、
起きちゃったからお風呂沸かしに来て、って頼んだのよね。
シンジはまだ眠そうで、なんかモゴモゴ言ってたけど、しょうがないなぁって、
来てくれた。
まあ、確かにあたしが自分でやればいいんだけどさ、
シンジに来て欲しかったんだもん。
ごめんね。

さて。
明日からシンジは夏休みに入るのよね。
と言っても、早速明日から予備校の夏季講習があるらしい。
ま、あんたは確かにもうちょっとおべんきょした方がいいわね。
どうせ自分じゃやんないんだろうし。
で、今日は“海の日”だから、二人ともお休み。
でも、この近くには海はないわねぇ。
てゆーか、雨。
なんでよ~。
せっかくのお休みなのにぃ・・・。

ビデオ見たりゲームやったりして、お昼ご飯。
シンジが、自分ちから大きなお鍋を持って来て火にかけてるから
ナニゴトかと思ってたら、なんと、ラーメンだった。
シンジ、あんた、あの約束覚えてたのね。
朝早くから鶏がらのスープを煮込んでたらしい。
それで今朝電話したとき、やたら眠そうだったのか。
麺をゆがいて、スープを張った器に入れて、
たっぷりの具を乗せて、でき上がり。
こんなの食べなくったって美味しいって分かるわよ!
またときどき作って欲しいなー、って思ったけど、
これはさすがにたいへんそうだから、安易には頼めないかな。

その後、二人でリビングで本を読んでたんだけど、
シンジはクッションを枕に眠っちゃった。
あたしの前で眠んないで欲しいわよね。
緊張感ないわねぇ。
まあ、ろくろく寝てないんだろうから、しょうがないか。
でも、そうやって安心して寝ていられるってことは、
やっぱり、あたしのこと、ほんとの家族だと思ってるってことよね。
それはそれで、あたしも少し安心。

風邪ひくといけないから、シーツを掛けてあげた。
そのとき、少し風が起きて、シンジの髪の毛が揺れた。
起きるかな? と思ったけど、よく眠ってる。
これは、暫く起きないわね。
そう思ったら、なんだかちょっとドキドキしてきた。
それで、なんとなく、あたしもシンジの隣にもぐり込んでみた。
なんだかとってもイケナいことしてる気分。
そうして寝っ転がってると、聞こえるのはシンジの寝息と雨の音だけ。
シンジ、あんたってイビキかかないから好きよ。
イビキって言えばミサトよね。
はっきり言って、ミサトは好きじゃなかったし、
普段は思い出すようなこともない。
でも、シンジといるときは、こんなふうに、ときどき思い出すことがある。
シンジは、ミサトの思い出も大切にしている。
だから、まだ、シンジとミサトの話はできそうにないわね、あたし。

横になってたら、あたしも眠くなってきちゃったから、
晩ご飯の買物に行く時間を逃さないように、
シンジにもらった目覚し時計をセットして、目を閉じた。
ほら、時計、役に立ったじゃない!

・・・と思ったのは甘かった。
目覚しの音で目が醒めたら、シンジはいなかった。
テーブルの上に、「晩ご飯の買物に行ってきます」って、書き置きがあった。
なによ! 一緒に行くって言ってたじゃないの!
起こして連れてってくれればいいのに。
と思ったけど、そうだ、と思って、DVRで音声を再生してみた。
そしたら。なによこれ~!
「・・・アスカ・・・。アスカ・・・。ねえ、寝てるの・・・? アスカ・・・。
買物行くよ・・・。ねえ・・・、寝たフリしてると・・・、
キスしちゃうよ・・・?
・・・・・・寝てるのか・・・」
ちょっと。
ちょっとちょっと。
「キスしちゃうよ」
から
「寝てるのか」
の間に、なにがあったのよ~~~。
今のシンジはそんなことしない、とは思うんだけど、
でも、未遂の前科があるし・・・。

暫くして、買物袋を下げて、シンジが帰ってきた。
雨の中、お買物ご苦労さま、って言ってあげなかったのは悪かったけど、
こっちはそれどころじゃなかった。
慌てて身繕いしてシンジを待った。
「あ、アスカ、起きてたんだ」
「『起きてたんだ』じゃないわよ。一緒に買物行くって言ったじゃない!」
「でも、寝てたから、起こすの悪いかなって、」
「あんたが出るのが早いのよ!
ちゃんと間に合うように目覚しセットしてたんだから」
「あ、そうなんだ。ごめん」
「い、いや、うん、それはいいのよ。そうじゃなくて・・・。
あのさ・・・、あんた、あたしが寝てる間に・・・、
つまり・・・、いたずら、してないわよね・・・」
シンジの顔が赤くなった。
「してないよ」
「なに狼狽えてんのよ」
「ほんとにしてないってば。
ただ、アスカが寝てるのか寝たフリしてるのか、分かんなかったから、」
「だから?」
「寝たフリしてると・・・・・・、キスしちゃうよって言ってみて、
だけど、それは、そうすれば、
寝たフリだったら絶対怒って起きるだろう、って思ったからで、」
「で? したの?」
「し、しないよ、そんなズルいことしないよ、」
「本当でしょうね?」
「本当だよ!」
「ならいいわ」
「・・・だけど、そのとき、アスカの喉がゴクってなって、
それ思い出しちゃったから・・・」
「・・・言っとくけど、あたし完全に寝てたわよ」
「分かってるよ」

そうよね。ズルしちゃダメ。
たぶん、一緒に寝たのがズルだったんだわ。
こんなふうに寝てるときに近付くのなんて、反則。
寝てるときにキスするのと一緒じゃないの。
そう、シンジはペットの子犬じゃない。
あたしの気紛れで一緒に寝たりしちゃいけないのよ。
あたしは、ちょっとからかっただけのつもりでも、
シンジは真剣に考えちゃうかもしれないんだし。
あたしが気をつけないといけないのよね。

その点、シンジはえらいわよね。
いくら家族同然って言ったって、あたしみたいな可愛い女の子が
同じシーツにくるまって寝てたら、
ちょっとは変な気になっちゃうのも仕方ない。
やっぱり、シンジは信用できるってことかな。
そうよね、一生懸命やってくれてるんだもの。少しは信じてあげなくちゃ。

7月19日 (火)

あたしの家からの初出勤。
シンジと二人で研究棟まで歩いた。
予備校の始業時間は早いから、あたしは8:00前に研究室に着いちゃう。
徹夜してる人がいない限り、あたしがいちばん早い。
帰るのもあたしがいちばんだから、これでいいのよね。
シンジの生活時間に合わせてあげるなんて、あたしって優しいわねぇ。

お昼ご飯はシンジのおべんと。
おべんと箱とナプキンは、注意して見ると、以前使ってたやつとは微妙に違う。
シンジが、わざわざ同じ柄のおべんと箱とナプキンを探して買い揃えてくれた。
あたしのために。
そして、あたしは、このおべんと箱とナプキンで、シンジを思い出した。
目覚し時計もだけど、このおべんと箱も捨てられないわねぇ。
大事に使わなくちゃ。

今日は、マヤに、仕事が早いって誉められちゃった。
要するに、集中力の問題なのよね。
気分転換とか言って、ときどきタバコ吸いに出る誰かさんたちとは
密度が違うもの。
まあ、こっちも必死にやらないと、マヤのペースについてくのは
たいへんってこともあるんだけど。
でも、なんか、誰かの役に立つのって気分いいわぁ。
マヤって結構ひとを誉めるの上手よね。
自分だってかなりヤるくせに。
あの調子なら、きっといい管理職になるわね。
あれ? もう課長さんなんだから管理職なの?

16:00頃、シンジからメイルが来た。
今、家に着いて、これからリビングとキッチンの掃除をするって。
晩ご飯の支度の都合があるから、帰る前に電話くれってさ。
な~んか、夫婦の会話よねぇ、これ。
シンジったら、意識してやってんのかしら。
迎えに来てよ、って電話しようかと思ったけど、
ヒヤかされるのが目に見えてるからやめた。
もう、シンジがいなくても、独りで帰れるし。

こんな生活がこれから暫く続くのね・・・。

7月21日 (木)

昨日は、また日記をサボっちゃったわねぇ。

日記をサボりがちなのは、仕事が忙しいってのもあるんだけど。
そもそも就業時間中に日記つけるもんじゃないしね。
それよりも、晩ご飯のあと、遅くまでシンジの宿題を見てやったり、
ゲームにつき合ってやったり、
ビデオ見たり本読んだりにつき合ってやったり、
おしゃべりにつき合ってやったりで、時間がないからなのよね。
あたしの顔を、ぼーっと見てることもある。
あたしが気がつくと、すぐに下向いたり、立ち上がったり、
テレビのチャンネル変えたり。
あんたねぇ、小学生じゃないんだからさ。
見たいんだったらいつでも見させてあげるわよ、顔くらい。
とにかくなかなか帰ろうとしないのよね。
遅くなってくると、あたしの方をちらちら見るし。
「そろそろ帰る?」
って聞くんだけど、決まって、
「ううん、そうじゃないんだけど・・・」
って言うのよね。
あたしが、
「もう帰ったら?」
って言うまで、絶対帰ろうとしないんだから。
昨日なんて2:00回ってたもんね、帰ったの。
随分眠そうだった。
乙女の肌に寝不足は大敵なんだけどなぁ。

でも、なんで帰んないんだろ。
やっぱり寂しいのかなぁ。
夜遅くまで一緒にいてあげるくらいは、ほんとに、お安い御用だけど、
他に何かしてあげられること、ないのかしら。

今日は、ちょっとおかしなことがあって、夕食のときにシンジに話した。
「今日、帰りにね、」
「うん」
「第3宿舎棟の脇を過ぎて、第2宿舎棟の方へ歩いてるときに、
道路脇に芝生植わってるわよね?」
「そうだっけ?」
「そうよ。それで、ちょうど、あたしが歩いてる反対側の、
第5宿舎棟と第6宿舎棟の間くらいの芝生のところに、
エメラルド・グリーンのワンピ着た女の子が立ってんのよ」
「知ってる人?」
「それをこれから話すのよ」
「あ、そっか」
「それがさ、なんかこっちをジッと見てるわけ。
ま、あたしは見られるのは慣れてるし、お腹も空いてたから、
無視して通り過ぎようとしたのよ」
「うん」
「でも、実は前にもその服を着た子、見掛けたことがあったの」
「ふーん。どこで?」
「居室」
「ネルフの?」
「うん。パーティションの陰から、あたしのこと覗いてたのよ」
「へえ。あんなとこに入れるなんて、誰だろう」
「それ思い出してさ、あ、そういえば、って振り返ったら、もういないのよ」
「じゃあ、速いんだ、脚」
「バカ言わないでよ。あのあたりに隠れるとこなんてないんだから。
一瞬で消えたのよ」
「ふうん」
「何よ、信じないの?!」
「だって、」
「居室にいたときも、探したんだけど消えちゃったのよ」
「変だね」
「でしょ?」
「うん・・・。もしかして、その子、綾波に似てなかった?」
「え? うーん・・・。それほどはっきりと見たわけじゃないのよね・・・」
「第壱中学の制服だったら、たぶん綾波なんだけど」
「だから緑のワンピよ」
「着替えたのかなぁ」
「まさか。でも、どうしてそこでファーストが出てくんのよ」
「あ、ぼくも前に綾波を見掛けたことがあるんだ。
そのときもすぐに消えちゃったんだけど」
「え~? なによ、あの女、そういう性質もあるわけ?」
「アスカに何か言いたいことがあって出てきたんじゃないかなぁ」
「ちょちょ、ちょっと、そ、それじゃまるで幽霊じゃないの。
だいたい、それだったらどうして消えるのよ」
「あ、そうか・・・。うーん・・・」
シンジに聞いたって分かるわけないんだけどね。
でも、ファースト説ってのがあるのか。
明日ちょっとマヤにも聞いてみようかしら。

今日もシンジは遅くまでいた。
ちょっと心配だったから、わけを聞いてみた。
「シンジはさ・・・、まだ、寂しい?」
「え? ううん、そんなことないよ」
「そう・・・」
「アスカは?」
「あたし? なんで?」
「いや、別に・・・」
「あたしはちっとも寂しくないわよ。
あんたがいるし、職場の同僚だっているし」
「あ、そうだよね」
「・・・最近、遅くまでこっちにいるわよね」
「うん」
「寂しいから、じゃないの?」
「え? そうじゃないよ」
「じゃあ、どうして?」
「うん・・・。そろそろ帰ろうかなぁ、って思って、アスカの方を見るとさ、
アスカ、すかさず、『そろそろ帰る?』って聞くじゃないか」
「うん」
「だからさ、なんだか、もう少しいようかな、ってなっちゃうんだよね」
「なによ。それじゃ、あたしが引き留めてるみたいじゃないの」
「そうじゃないんだけど、だって、
アスカがそう言うとき、なんかいつも寂しそうだから、」
「な、なに言ってんのよ! そんなわけないでしょ?!」
「ごめん、じゃあ、すぐ帰るよ」
「そ、そんなに急がなくったっていいわよ。あんたって極端ねぇ」
「そうかな・・・」
「は~。なんとまぁ・・・。
あたしは、あんたが帰りたくないんだろうって思ってたのよ。
ちらちらこっちの方見てるし、
『まだいていいの?』みたいな顔してるからさ。
寂しいのかな、って思ってたわけ。
あたしだって、あんたが寂しがってるのに、
『とっとと帰れ』みたいなこと言いたくないからさ、
そういうふうに聞こえないようにって思って、気をつけてたのよ。
じゃあ、なに、あれって、『もう帰ってもいい?』って意味だったわけ?」
「あ、そういうわけでもないんだけど、」
「じゃあ、どういうことよ」
「えっと、なんていうか・・・、
別に、帰りたいとかそういうことじゃなくて、
そろそろ寝ないと、アスカが明日の朝たいへんじゃないかなって思ってさ、
だから、『そろそろ寝よっか?』っていうか・・・」
「あー、そういうこと・・・。
つまり、あんたあたしに気を遣ってたのね」
「えっと、まあ、そうかな・・・」
「あたしはだいじょぶよ。もう平気。
あんただって、独りでやりたいことくらいあんでしょ?
あんまりあたしに気つかわなくていいから、帰りたくなったら帰りなさい」
「うん・・・、ごめん」
「謝ることないわよ。
・・・あ、帰れって言ってんじゃないのよ、
帰って欲しいわけじゃないの、」
「そうなんだ」
「だから何度もそう言ってんじゃないの。って、なに笑ってんのよ」
「ご、ごめん・・・」
あたしたちは、何だかおかしくなってしまって、二人で笑った。
こんな夜中に、いったい何をやってるのかしら。

でも、おかげでひとつ、分かったことがある。
あたし、シンジに気を遣ってたんだ。
いつの間にか、シンジのことを考えて、傷つけないように、
嫌われないように、って思うようになってたのね。
それをシンジが敏感に感じ取って、逆にあたしに気を遣わせちゃったんだわ。
世話ないわねぇ。
でも、しょうがないか。
今までのあたし、そんな行動基準を持ったためしがないんだから。
人から嫌われたくなければ、必要とされたければ、それにふさわしい価値を
身につければいい。
そう思ってた。
そういう価値のない人は、人から嫌われても、必要とされなくても仕方ない。
そう思ってたんだもの。
それは、間違いってわけじゃないんだけど、その、人間の価値は、
能力や知識だけじゃないっていうことを、シンジは教えてくれた。
あたしも、シンジが一緒にいたいって思えるような人間になりたい。
シンジに言われてうれしいことは、シンジにも言ってあげたい。
シンジにされてうれしいことは、シンジにもしてあげたい。
たぶん、そういうことなのね。

シンジに遠慮してるのかな。
シンジのために何かをしてあげたい気持ちはあるのに、
そう素直に言えないから、変なふうに誤解されちゃうんだわ。
やっぱり、今度の旅行で、少しはっきりさせた方がいいのかなぁ・・・。

7月22日 (金)

今日、シンジは21:30に帰った。
突然、早くなったわねぇ。
このくらいが普通か。
「別に、早く帰りたいんじゃないからね」
って、分かってるわよ、そのくらい。
気を遣うんじゃないって言ってるじゃないの。

マヤから借りた“Flowers for Algernon”を読み終った。
けっこう面白かったわね。
同じ著者の本、探してみよっと。

なんでマヤがこれをあたしに読ませたのか、その理由はだいたい想像がついた。
あたしが書いてた経過日誌の最初の方が、
この小説の主人公、チャーリィの書いた経過報告に似てるからよね。
てことは、シンジがアリスってこと?
もしかして、あたしたちをヒヤかしたかったわけ?
そういえば、マヤはDr.シュトラウス? それともProf.ニーマー?
それ、聞いてなかったっけ。
それにしても、結末が泣けるわよね、これ。
それはいいんだけど、チャーリィって、ちょっと情けないわよね。
あたしだったら、例え同じ状況に置かれても、
周りのひとに悲しみを与えるようなことはしない。
最後の瞬間まで、自分のやるべきことを頑張ってやり遂げる。
てことは、反面教師にしろってことなのかな。
何があってもシンジにつらく当たったりしないように、って。
それは深読みし過ぎか。
それに、あたしたち、そんな状況はもうとっくに経験済みだもんね。
それでもこうして一緒にいるんだもん。
これからは、何があっても、きっとだいじょうぶ。

あれから、ヒカリとけっこう頻繁にやりとりしてる。
あたしの毎日の生活を、ちょっとだけ書いたら、
「それじゃあ同棲じゃない!」
ときたもんだ。
それは誤解ってものよ。夜は別々に寝てるんだから。
いくら自分たちが遠距離恋愛で、近距離組が羨ましいからって、
ひとの言うことを信じないのは心が狭い証拠よ。
てゆーか、そもそもあたしたちはまだそういう関係じゃないんだってば。
まったく、ヒカリったら何を勘違いしてるのかしら。

勘違いって言えば、夕食のときにこんなことがあった。
「あ、そうだ」
「なによ」
「洞木さんとメイルやりとりしてるんだって?」
「どうして知ってんの?」
「今日、洞木さんからメイルが来たんだ」
「へ~。何の用だって?」
「いや、別に、用じゃないんだけど・・・」
「用もないのにメイルしてきたわけ?
あ、なるほど、わかった。いつものやつか」
「いつものって?」
「ノロケでしょ?
もー、ヒカリのメイルって、鈴原の話ばっかで困るのよねぇ。
とにかくヒトに聞いて欲しくってしょうがないみたいでさぁ」
「ふーん、そうなの。
あ、それでさ、ぼくのアドレス教えたの、アスカ?」
「え? そうだけど?」
「洞木さんがさ、アスカのメイル、聞いてもないのに、
ぼくの話ばっかで困るから、注意してくれって、」
「え?」
「よっぽど誰かに聞いて欲しいのね、って、」
「な、なんですってぇ?!」
「ぼくに言われても困るよね。あはは」
「そ、それは・・・。それは、ほら、
それは、だって、他に書くことないじゃない。
ヒカリと共通の友達で、いまあたしの近くにいるのってったら、
あんたしかいないんだからさ」
「うん、そうだよね。じゃあ、そう返事しとくよ」
「うん・・・」
「洞木さん、なんだかちょっと誤解してるみたいなんだよね。
どうしていつもああなのかなぁ・・・」
ヒカリっ! あんたはっ!
なるほど、分かったわ。
こないだ、あたしが鈴原に、ヒカリのメイルをどうにかしてよって
メイルした仕返しに、シンジを巻き込んだわね!
うっかりシンジのアドレスを教えたのは迂闊だったなぁ。
これじゃ、あたしの攻撃は全然効かないのに、
ヒカリの反撃は全部クリティカル・ヒットじゃないの。
一時撤退して作戦の練り直しね。

鈴原→ヒカリ経由でもたらされた、学校でのシンジ情報は
なかなか興味深い。
シンジは、あたしが治るまでの間、ずーっと塞ぎ込んでたんだって。
授業に出ててもノートも取らなかったって、鈴原が言ってるらしい。
それはさすがに大げさだと思うけど。
でも、あたしのところにお見舞いにくるようになってから、急に明るくなって、
人が変わったようになったって。
鈴原は、シンジがあたしのことを話すのを見て、
少し頭がおかしくなったんじゃないかと思うこともあったらしい。
あたしは、そんなこと知らなかった。
そんなにまでして、あたしを待っててくれてたなんて。
もちろん、罪悪感とか責任感とかもあったんだろうけど、
最近のシンジの様子を見てると、やっぱりそれだけじゃないと思う。
寂しかったって、あたしに告白したときの様子は、絶対、嘘じゃなかった。

シンジは、あたしが好きなのよね。
確かめたことはないけど、そのくらい、態度や仕草で分かるもの。
いつも、すごく気を遣って、優しくしてくれる。
あたしの言うことは何でも聞いてくれる。
今のシンジって、起きてから、寝るまで、
完全にあたしだけの生活で、自分の時間は全然ないのよね。
誰かに強制されたわけじゃなくて、
あたしが頼んだってだけでそうしてくれてる。
学校や予備校での様子は知らないけど、鈴原情報を見る限りでは、
授業が終ったらいそいそと帰ってたみたいだし。

あたしもシンジを嫌いじゃない。
ってゆーか、好きだと思う。
あーあ。
書いちゃった。
最近、どんどんシンジを好きになってく感じがする。
日記も、ほとんどシンジのことしか書いてないし、
そうしてシンジのことを書いていると、また好きになった感じがする。

明日はいよいよ浅間山ね。
あたしたちの思い出の場所か。
シンジの気持ち、確かめてみようかな・・・。

そうじゃなくて、確かめなきゃいけないのは、あたし自身の気持ちよね。
シンジを好きなのは確かだと思う。
でも、ちょっと怖い。
夜も二人っきりっていうのがなぁ・・・。
いま、お互いの気持ちを確かめ合ったりしたら、
なんか、変なことになっちゃいそう・・・。

でも、今のシンジなら、あたしを裏切らないわよね。
そうよ、もっとシンジを信じなくっちゃ。
こないだだって、あたしが惑わすようなことしちゃったのに、
思い止まってくれたんだし。
あたしがちゃんと気をつけてれば、今更どうこうなったりしないわよね。
あたしたち、いろんなことがあったけど、
今はそれを乗り越えて、こうして一緒にいるんだし、
ちょっとくらい気まずいことがあったって、平気よね。
それより、いい機会なんだから、そろそろちゃんとしなくちゃ。

って、なんであたし日記でこんなにもりあがってんのかしら。
ま、決心できたんだからいっか。
明日、頑張ろっと。

つづく