湖西 ’15.6.10 曇り
今回は滋賀県側の比叡山の花々を比叡の主の案内により観察して楽しく徘徊した。それにしても咲き初めのカキノハグサの多さには驚愕ものと感じずに得なかった。それにもちろんこの時期だ。6月の比叡山といえばセッコクというラン科のお花ははずせない。このふたつを代表花に、他にも初夏のこの時期なのにうれしい悲鳴のような感の植物たちを目の当たりにさせていただき、これぞ目から鱗の思い出となるような山域となることだろう。
植物たち全般にいえることだろうが、本年の山歩きでは例年になく花暦早く、汗して登ってきて花たちに出会うのがやや遅かったようだとの思いばかりなのだが、やっぱりセッコクのお花も終焉となっていたのだった。それにつけても参加の皆さんによれば、セッコクは例年になく本年はまばらにしか見られないなとの声しきりであったのだが、こちらは自然の中での初めての出会いには十分満足させていただいた。だが、この山域では大木の大杉上部ばかりに寄生しているために、双眼鏡で可愛らしいお花を楽しむのが精いっぱいであり、写真撮影とまではいかなかったのが悔やまれたのは致し方ない。
まずはそのカキノハグサ(ヒメハギ科)をご覧いただこう
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図鑑によれば花弁の3個は2cmほどの長さで合着している。私は橙黄色の花は他の花にない姿をしているように思えるが・・。 下の竜骨弁の先には房状の三つに切れ込みのある付属体が二つついている。最初は淡黄色だが、次第に橙黄色が濃くなり赤っぽくなるようだ。 5個の萼片の2個は花弁と同長で兎の耳のようにピンと立っていてよく目立ち、他の2個は基部で緑色に見える部分のようだ。 なお、近縁種のナガバカキノハグサは幼葉のみで花はついていなかったのが残念だった。 |
これまでからそんなに容易に出会える種ではないと思っていたカキノハグサに今日は数えきれないほど見られ、一番最初に出会った山はどこだったのだろうと思いながらの観察であった。それは忘れもしない伊吹北尾根の急な尾根を降った途中に柿の葉っぱがなぜ花を咲かすのかと不思議に感じながら、腰をかがめたのがきのうのように思いだされた。このお花に再会でき感動の一日と思えるほどいい日となった。
続いて、ツツジの仲間の中でも、これまた超珍しいバイカツツジにもいっぱい出会えたのだ。
バイカツツジ
このツツジは葉が展開してからの白い花でやや遅咲き種だろう。でも、ここではほとんどが終焉となっていたのだが・・。 葉は枝先に集まってつき、花は2cmほどで花冠に紅紫色の斑がついて輪になっている。葉柄や若枝には腺毛が多い 雄しべは上に短い2個がつき軟毛が密生する。また下に長い3個の計5個としべまで珍しいつき方の姿だ。 この斑模様は輪になるのが西日本型で、東日本では上側3弁に紅紫色の斑点があり、斑の姿が異なる。この2形態は 静岡県の富士川から新潟県の糸魚川に至るフォッサマグナを境界にしているといわれる。 |
私は関西圏では、この希少種と思われるバイカツツジを最初に見たのは、たしか裏六甲の地獄谷へ至る尾根で見たと記憶しているが、もう10年以上もバイカツツジとの出会いは途絶えていたのだ。まして六甲ではひと花のみの出会いだったが、こちらでは何株にもわたるこのツツジが咲き乱れており感動のひと時となったのだ。どうやらこれまた珍しく機会の微小さにもかかわらずラッキーな日であったが、こんな素晴らしきかな一日としてくれた比叡の主に感謝してもしきれないほどであった。
さて、ほかにはどんな花々が見られたかなといえば、山野草はさすがにそう多くはなかった。他にヨウシュヤマゴボウの仲間で比較的珍しいヤマゴボウ(白い花が咲けば葯の淡紅色が見えて可愛い姿なのだが、今日はまだ蕾で見えなく残念だった。)も見られた。
それにキク科のニガナ、ハナニガナ,ジシバリも多数群生していた。また、トキワハゼ(下唇が白っぽい方で、紫色が強いのはムラサキサギゴケ)、ヒメジョオン(茎に白い髄がつまっている方で、指で押さえて凹むのが中空のハルジョオン)も多数咲いていた。
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ミズタビラコ(ムラサキ科) | シソバタツナミ(シソ科) | ミヤコアオイ(ウマノスズクサ科) |
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ミヤマヨメナ(キク科) | ノコギリソウ(キク科) | バイカオウレン(キンポウゲ科)実 |
暑くなり始めたこの時期はやっぱり樹木花の観察が楽しい。それらを見てみよう。なお、下記以外のほかにもエゴノキの落下盛んの花の絨毯と化した登山道が随所に見られ喜々として歩けた。それにツルデマリと呼んでいつも愛でるのだが、山歩きの方にはツルアジサイとの呼称が一般的なつる性の花も離れた所で咲いていた。またコバンノキという目出度い種もあったが、ジャケツイバラやモチツツジとともに花は終わっていた。
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コアジサイ(ユキノシタ科)満開 | スイカズラ(スイカズラ科)満開 | オオバアサガラ(エゴノキ科)終盤 | バイカウツギ(ユキノシタ科)終盤 |
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コゴメウツギ(バラ科)終盤 | サルナシ(マタタビ科)満開 | マタタビ(マタタビ科)蕾 | シラキ(トウダイグサ科)蕾 |
最後には樹木の果実類だが、どうしても高木の位置多しのために撮れるのは限られているのが惜しい。ほかにもミヤマガマズミ、ムシカリにサルトリイバラなどの果実も見られた。
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アブラチャン(クスノキ科) | ヤブデマリ(スイカズラ科) | ミツバウツギ(ミツバウツギ科) | ヒメコウゾ(クワ科) |
これだけ植物層豊かな山もうれしい。これからは時を変えて足しげく通うこととなるだろう。案内人の主さん感謝です。花好きなご参加の方々ありがとうございました。今後とも何度でも山で逢いましょう。