京都北山 錦秋の京の植物園 ’15.11.7 曇り

 今日は比良へとの予定であったのだが、朝からTVは西日本では、お出かけには傘をしのばせておきましょうと報じているではないか。やゃ、これはまずい!、と急遽行先変更としよう。ということで、そうだ、長らくご無沙汰の府立植物園へ紅葉を見に出かけることにしようと、いそいそと出かけて行った。

 近年の植物園へは地下鉄利用のために、どうしても便利よい北山門からが散歩の習わしとなっていたのだが、今回は北大路橋より鴨川からの大文字山の風景を見ながら園に向かい、橋のすぐ先を歩きながら正門前の”けやき並木”の紅葉を楽しむのもよかろうと思いついた。これがまた大正解であったのだ。そこには大木ばかりのケヤキ並木の紅葉が、一番の見ごろのように目の前に並んでいたのである。


植物園正門前のけやき並木の紅葉

 けやき並木の素敵な紅葉景色にうっとりしながら、園内へあゆむ目にまず入るのは、青々とした”くすのき並木”の直線的な小径だった。この並木へやってくれば、いつでも川端康成の『古都』における「きものの町」の章を思い出してしまうのだ。

 春の日、ヒロインの千重子は父に誘われ、母との三人家族で散策にやってきたのだが、そこへバッタリ父の商売仲間である西陣の織屋の親子と出会った。家族どうしが商売の話しから始まり、娘の千重子の相手にこの青年はとの件などが、植物園のくすのき並木の散歩中に綴られるのである。

 今日の私も、歩きながらその文を手繰り寄せているのであった。頭に残っているお気に入りの件は次のところだった。
『楠の並木は、木ずえで、左と右の木が枝を交わしていた。その木ずえの若葉は、まだ、やわらかく薄赤かった。風がないのにかすかにゆれているところもあった。五人はほとんどものを言わないで、ゆっくり歩いた。めいめいの思いが、木かげでわいてきた。』


園内最初の見事な、くすのき並木

 ところで、川端康成が朝日新聞に『古都』を連載開始したのが、時を同じくして昭和36年10月8日から昭和37年1月27日の107回とある。その間に京都府立植物園が返還されて公開におよぶニュースを知った彼は、古都の連載にも園の歴史を始め、くすのき並木などの散策を採り入れたのだろう。
 さらに園の歴史についてもう少しふれてみよう。この植物園は大正時代に開園したのだが、戦時中は園内に菜園が設けられるなどして、食糧増産の場になったりし、また、敗戦後は米軍家族の住宅地として利用され、園内の植物たちへの手が行き届かなくなって荒れる森状態となっていたのだろう。しかし、ようやくにして、昭和32年12月に米国からの接収解除となって、ふたたび府に返還され、府立植物園として公開が始まった。今では自然が好き、花が好き、さらに木が好きな方々の京都人のオアシスとなっているのだ。。

 さぁ、話しを戻して、この時期の花として知られるマルバノキ(マンサク科)を見にいってみよう。紅葉の大木で有名なフウはまだまだ青葉が多く目立っていたのだが、お目当てのマルバノキだ。お~紅葉の中できれいに咲いるではないか。この種は関西圏の山歩きではほとんど目にすることはできない樹木なのだ。この樹が多いのは美濃方面の山々だ。私も最近では簗谷山という岐阜の下呂の山で出会えたのだった。花も葉も独特な姿で覚えやすい樹木であり、この時期に花を咲かす希少な種であろう。

     
 花は背中合わせに5弁花を2個咲かす  薄くやわらかい葉は紅葉が見事だ ’14.5.13に簗谷山で見た葉 

 次は山野草の花がまだポツンと咲き残っていたが、これも珍しい種ではなかろうか。それはユキミバナ(キツネノマゴ科)だった。この花はもともとスズムシバナと同一視されていたのだが、1993年に細かく観察すれば本家とは違いがあって、新種として発表されたものであり、京都府と滋賀県の境あたりの狭い分布域のようだ。
 もう何年前だろうか、あちこちその花目指して探し回ったのは、そしてようやく福井県まで遠路はるばる出かけて、山麓で群れて咲くユキミバナに出合えた嬉しさがきのうのように蘇ってきた花であった。もちろん、スズムシバナの自生種も京都府下で過去にも見てはいたのだが、そちらの咲いていた場所は今では開発によって、もうその姿は見られないのが残念である。来年の秋くらいには、またユキミバナを植物園でなく、自生地で楚々と咲く山麓を訪ねたいなとの思いがふつふつと湧いてきた。

 ユキミバナの特徴は図鑑によれば次のとおりとある。 ①常緑であること  ②茎が立ち上らず匍匐すること  ③花茎に著しい開出毛があること

     
 ユキミバナの正面から    側面から、花は筒形

 さて、せっかくであるから、いろいろな紅葉にもふれてみよう。

     
 1.ヤマザクラ(バラ科)  2.ヌマスギ(スギ科)別名ラクウショウ  3.サワシバ(カバノキ科)
     
4.カツラ(カツラ科) 5.ミツデカエデ(カエデ科)  6.イチョウ(イチョウ科)

 *1.ヤマザクラはほぼ黄色でなく赤色の紅葉だろう。

 *2.よく似た樹種にメタセコイヤが知られるが、メタセ・・が対生であるのに対し、こちらのヌマスギは互生が相違点だ。

  *3.サワシバはクマシデの葉と酷似するが、やや幅広なのがこちらで、ほぼ赤い葉にはならず黄葉となるようだ。

 *4.カツラの名札がついた樹の葉を手に取った男3女1の大学1年生くらいと見た真面目そうな青年達が、「アッ、これだな甘い匂いがしているのは・・」と言っただけで笑いながら去って行ったのだが、大学生にもなっているのならば、甘い匂いの話をさらにもっと続けてほしいなぁ~と側で黙って聞いていたのだ。こちらは聞き耳を立てながら、それ以上の話の言葉はイヤ待てヨと、飲み込んでしまった。
 さて、私はこれらの紅葉のメカニズム等について話をする機会は今シーズンの紅葉期の中でまだ、取り上げることができるだろう・・・。

 *5.ミツデカエデは信州以外に関西の山ではまだ目にしていないのだが、赤や黄色の両方の紅葉が見られるハズだ。

 *6.イチョウはいわずと知れた黄葉の王様だろう。でも、この木はまだまだ黄葉はこれからのようだったが・・エ~なぜ赤くはならないの・・?。それはまたネ~

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